著者インタビュー01 山縣敏憲さん『塾長が愛したカメラたち』を出版

本の企画はどのように考えましたか?

私は、勤めていた会社で、物流を担当していました。海外へ出張しては、港や鉄道の様子を、写真に撮っていたのです。
その過程で、クラシックカメラについて、学び始めました。ほとんど独学ですが、調べたことをブログに書き溜めていったのです。せっかく学んだことを忘れないようにするためですね。
たとえば、何月何日に、どのカメラを、どこで購入したか、値段はいくらで、そのときの状態や付属品はなにか、などというようにです。ついでに、そのカメラについて、製造された年月やその背景なども調べて、ブログに綴っていきました。
カメラだけでも相当の情報量になりましたが、実際のブログには、カメラ以外の出来事なども記載しています。だから、ブログを見るだけで、当時のことが鮮明に思い浮かびますね。
そのブログ記事を、最初に本にしたのが、2000年に出版した『クラシックカメラで遊ぼう』(グリーンアロー出版社)です。このころは、クラカメブームだったので、この本はけっこう売れました。
最初の本を出版した後も、カメラを買い続けたので、ブログの記事も増えていったのですが、しばらくすると、カメラ仲間たちが、「2冊めも出そうよ!」と発破をかけてくるのです。
それで、つい私もその気になって、同じ出版社へ出向き、「2冊目を出したいんだけど……」と相談したところ、「山縣さん、クラカメブームはとっくに終わりましたよ!」と言われてしまいました。
それなら自分でお金を出して作ろうかと思っていたところに、古関さんと知り合って、出版の機会をいただいたのです。

原稿づくりでたいへんな点はありましたか?

山縣敏憲さん 写真

私は文章を書くことは慣れていました。うまいかどうかは別にして、ブログにはカメラ以外のことも書いていたので、けっこうな量になっています。
最初に古関さんに送った原稿は、ブログの記事をそのままコピーしたものでしたが、それをうまく整理してもらえたので、助かりました。
カメラの写真も日ごろから撮影していたので、本づくりはスムーズに進んだと思います。ただ、編集した方はたいへんだったと思います。なにせ、写真だけで200枚も送ってしまいましたから(笑)。

出版した効果はいかがでしたか?

山縣敏憲さん 写真

仲間たちはたいへん喜んでくれました。「山縣さん、○○の記事が参考になりました」とか、「第4時限目がおもしろかったですよ」とか。
第4時限目というのは、現在、私が大学で講義をしていることにちなんで、第1章、第2章……という代わりに、第1時限目、第2時限目……と、編集の古関さんがつけてくれたのです。私が山縣写真塾の塾長でもあることから、みんなに授業をしているイメージだったのでしょう。

編集により、だいぶすっきりと、わかりやすくなったおかげで、私自身も今でもこの本を参考書のように使っています。
「あれ、なんだったけな〜?」という時に、ブログで記事を探すのはたいへんですが、この本なら、どこになにが書いてあるか一目瞭然ですからね。とても役立っていますよ。

それと、この本を通じて、仲間が増えました。事前にこの本を読んでくださった方が、「あの山縣さんですか?」なんて、声をかけてくださることもあります。カメラ好きの中には、上には上がいて、もっとおもしろい本を紹介してくれる人もいます。本を読むことで、お互いが理解しあえるので、コミュニケーションの一環としても、この本はとても役立っています。

自費出版は、どんな人に向いていると思いますか?

まずは、なにかに一所懸命に打ち込んできた人ですね。好きなことがあるなら、それをまとめておくのがいいと思います。
あとは、自分史なんかもいいですね。「私はこういう人間だ!」と決して見せびらかしたり、威張ったりするのではなく、「こんなことをしてきました」「こんなにたいへんでしたが、乗り越えることができました」なんていうのは、多くの人に共通するものではないでしょうか。

あと、やはり、コミュニケーションのための道具ですよね。本を通じて、自分のことを知ってもらう、自分の名前を知ってもらう。本があれば、私も相手のことを知ることができます。そういった相互理解には、本が最適です。
相手のことがわかれば、相手との仲間意識が生まれ、自然と思いやりの気持ちが湧いてきます。
私は本を出したあとも、さらに仲間が増え続けています。いまでは、毎年2回、みんなで好きなものを持ち寄って、オークションを開催しています。私がオークショニアをやっているんですよ。カメラを売る人もいれば、バッグでもハンカチでも、なんでも出品できます。値段も手ごろな価格にしますので、だれでも参加して、楽しむことができるのです。

そのように、気の合う仲間と知り合い、交流できるのは、本があるからだと思います。本によって、自分を見せることができるので、相手も安心して付き合えるのではないでしょうか。

(聞き手:Olive Books 編集長 古関夢香)

塾長が愛したカメラたち 表紙

塾長が愛したカメラたち

山縣敏憲

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